『稲は見ている、私を』 それは金谷さんから発せられた印象的な言葉でした。 稲作の慣行栽培から転換をはかり5年目の夏に思う自然栽培への想いとメッセージをここで伝えたいと思います
4年目はそこそこ採れた、今年は正念場なのだ。 息子には米だけで食べていけるというバトンを渡す。
そして地域の人には自然栽培の結果を見せなければいけないという金谷さんの自然栽培にかける想いの数々を2012年8月5日、記録して参りました。
北海道久遠郡せたな町の米農家、金谷さんの稲作経営は収穫の秋を迎えても、借金が増えるだけ。 その当時、金谷さんにとっての春とは、『秋にはどうせ借金増えるだけ』だと感じる季節でしかなかった。 そして息子共々に出稼ぎ込みの、まして米に感謝するなどと、そんな感情など沸きもしない農家であったそうです。
そのようなやりがいの無い農業経営を続けている日々の中で
奥様がリューマチを発病され、強く転換を迫られる思いと向き合っていた、まさにその時。
平成19年度、木村秋則氏の講演会に出かけて行き、金谷さんご夫妻は『これだ!』
強く直感を覚え、平成20年度より慣行栽培から自然栽培への大転換をはかった。
慣行栽培と両天秤にかける事もなく。
命がけで自然栽培と向き合う覚悟を決めたのだそうです。
そこからは、除草の為に田植えからのひと月半は膝まで田んぼにつかり、毎日10キロ、除草作業に明け暮れる、しかし、それが苦にならない結果が秋に金谷さんを待っていたのです。
出稼ぎに行かなくとも、トラクターも農機具も買えた。
それに春の植え付け時期と草取りの1ヶ月半が過ぎれば時間の余裕も生まれる。
代掻きは荒く、なので機械の油も食わない、米に悪い影響を与えたくないので、息子を圃場で叱る言い方すら変わり、親子で会話が増えた。
このごろはやっと余裕も出てきて、生物を見る余裕も生まれ、そうすると総てが共生している、自分はあめんぼう、すずめ、とんぼ、総ての生き物に生かされている事を実感した。
農薬使う農業にはこのような感動は無いと言い切る金谷さんでありました。
稲の出来がよければ田んぼにすき込む藁の量も増える、すると来年度のための栄養も増える事になるという、まさに持続可能な圃場なのである。
今年の刈り取り予定は9月10日を予定。
肥料を与えている時代には考えられない収穫量を予想しているそうです。
今は、仕事が楽しくてしかたない金谷さん、二時には目が覚めてしまい、その日一日の作業を考えるというクリエイティブな感性が満たされる仕事の楽しさも語っておられました。
自然と向き合う農業から金銭以外で得たものは『すがる』のではなく『感謝の心』
近隣地域の人々は、自然栽培の農業に魅力を感じている、だから結果を見せることが自分の役目なのだと過去の独りよがりの自分とは脱却した、
農家としての他者への配慮の心は
一人の農従事者としての意識を超えたところにあると私は感じるのです。
2012年8月5日金谷農場にて
リンゴの樹と会話する木村さん。
稲の視線を感じる金谷さん。
人の心も変えてしまう自然栽培の普及を今後も
どうぞ宜しく御願いいたします。
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周囲を自然の森に囲まれた圃場 |
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右は金谷さんの息子さん |
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HOKKAIDO木村秋則自然栽培農学校の生徒さん |